雪崩講習会(講師養成講座)

少し堅い話になります。

なるべく柔らかく記載しますが。

でも長いです。ごめんなさい。


我々冬山登山者が忌避すべき存在の一つ、雪崩。

雪崩に遭遇しない方法と、雪崩に巻き込まれた場合の対処方法を学んで来ました。



我々盛岡山友会は毎年雪崩に関する講習会を開催・受講しています。

何故ならば、仲間を犠牲にしたくないからです。

仲間の家族と自分の家族を悲しませたくないからです。


1月24日・25日。1泊2日の講習会でした。

全てをご紹介できませんし、学んだ内容全てを解説することも出来ません。

筆者の主観で抜粋して紹介させて頂きます。


「シャベルコンプレッションテスト」のサンプルを作成しています。雪の柱を作っています。

語弊を恐れず簡単に言うと、この雪の柱を「上から叩いてすぐに壊れたら雪崩易い状態だ」と判断出来ます。

雪崩に遭わない為に行ないます。冬山に登っている時、「雪崩が発生するかも」と予想したらこのテストを行ないます。

本テストの結果「雪崩が起きるかも」と判断したら、先のことを考えざるを得ません。いや、そこで引き返すかルートを変更します。


円柱テストと呼ばれるテストのサンプルを作成しています。シャベルコンプレッションテストと同じく、「雪崩の発生し易さ」を判断するテストです。

筆者の所感ですが、このテストは難しいと感じました。

何が難しいのか。

そいつを説明する前に、雪崩のメカニズムを簡単に説明します。

以下の説明は雪崩のメカニズムを聞いたことが無い人向けであり、しかも完全に筆者の主観です。

本講習の講師が教えてくれた内容とは直接関係無い上、メカニズムの全てを網羅していない説明になります。ご了承下さい。

積雪には層があります。

ケーキのミルフィーユを想像して下さい。

クリーム・生地・クリーム・生地・クリーム・生地・・・・・・・という風に、層になっています。積層しています。

雪も同じなんです。

「雪崩のきっかけになりにくい雪」・「雪崩のきっかけになりやすい雪」・「雪崩の切っ掛けになりにくい雪」・・・・・と層になっています。

不適切な表現ではありますが、「クリーム=雪崩のきっかけになりにくい雪」、「生地=雪崩のきっかけになりやすい雪」と想像してください。

積雪がず〜っとクリームだけなら雪崩は発生しづらいのですが、生地が在ることで、生地の存在を切っ掛けに雪崩が発生します。

何かしらの力が加わったとき、クリームと生地の間に空間が出来て、その空間より上のクリーム達諸々が崩れて滑り落ちていきます。

これが雪崩です。

ミルフィーユを人差し指で横からぐうぅぅ!っと押した時、「ズレ」はクリームと生地の間で発生し、そのズレを切っ掛けにしてミルフィーユの上部が滑って行きます。それと同じです。ミルフィーユを押した事はありませんが多分そうなります。

もしかしたら倒れるかもしれませんが。


さて疑問に感じたと思います。

「人差し指でミルフィーユのどの部分を押すの?どこを押すかで結果が変わるのではないの?」と。

まさにその通りです。

上記円柱画像のテストでも、円柱を引っ張って、どこが雪崩れる生地なのかを探ります。

もちろん満遍なく色んな場所を引っ張りますが、場所によって力加減が変わってしまいます。

つまり生地が滑る場所が、人という要因によって変化します。

信用して良いのかどうか分からないテスト結果が出る・・・・ような感じがします。


筆者はシャベルコンプレッションテストを用いようと感じました。

また、スキーヤー向けへのテストも教わりましたが割愛します。基本はシャベルコンプレッションテストと同じです。


兎にも角にも、雪崩を予知して雪崩に巻き込まれない事が極めて大切であると認識しました。




ビーコンの性能比較をしています。

本講習は「講師を養成する講座」という位置づけに有り、難解な用語も多数出てきました。

で、一般向けの講習では行なわない「異なるメーカー間でのビーコンの性能比較」を行ないました。

この画像は、(詳しくは違うのですが)「ビーコンによって磁力線を受信する距離がどんだけ違うのか」を比較している画像です。


難しくありません。

ビーコンは言うまでも無く、雪崩で埋まった人が「何か」を発する道具です。

そして探す人が「何か」を受け取り埋まった人の場所まで導いてもらう道具です。


「何か」とは、「電磁波から磁力線を抽出したモノ」です。

難しいと思った人へ。電磁波とか磁力線とか無視して下さい。


批判を恐れず言います。ビーコンは発信モードのときは磁石です。


小学生の時を思い出してください。

紙の上に砂をまぶして、紙の下から磁石を当てたときを思い出してください。


砂(砂鉄)は磁力の方向に従って楕円形状に変形した筈です。



雪に埋まったビーコンも一緒です。

雪の下から磁石の楕円の形を発します。


捜索者はそいつを感知して、楕円の形を辿って雪に埋まった人を探します。


ビーコンの受信モードのメカニズムの説明は、勇気を持って省きます。

「何だか不思議な受信機」だと思っていてください。

捜索の訓練を怠らないことの方が大切です。


しかし以下の二つは必ず覚えていて下さい。

1)操作方法の熟知が必須である。命に関わる機器であり、ボタン操作一つが人の命を左右します。

2)ビーコンへの衝撃ダメ絶対




ビーコンの性能比較2です。

色々な種類のビーコンが並んでいます。中々見れない光景ではないでしょうか。


またまた誤解を恐れずに申します。

これからビーコンを買う初心者や初級者の方は「3アンテナ」をお勧めします。

ザックリと理由を説明します。

「アンテナが3本あるから探しやすい」です。

当然3アンテナならではのデメリットもあります。

しかしそれでも、初めて買う方は「3アンテナ」の方がメリットが有ると感じました。

好みが出来てくる中級者以上の方には当てはまりませんのでご注意下さい。




プローブ(棒)による埋没者捜索のデモです。


プローブを用いて上から探針しています。埋没者にヒットしたときの感触を学んでいます。

慌てていても勢い良く刺さないで下さい。埋没者が痛いです。

埋没者役は筆者である私と、当会最若手が担当しました。


非常に濃厚な講習でした。

今日学んだ内容を元に一歩ずつ進化していきたいと考えております。


(雪崩について実地で学んだ事が無い方は、必ず経験者と同行して雪山に臨んで下さい。座学の限界はご存知かと思います)

成瀬